社会文化思想史B
担当者 米田 祐介(マイタ ユウスケ)
年度 2020授業コード 1520230001 科目ナンバリング
対象年次 2~4 授業形態 講義 実施形態
時間割 秋金5 開講キャンパス 白山 教室 非対面授業(白山の同時双方向型授業)
単位数 2 主たる使用言語 日本語 実務教員科目
授業科目区分
授業回数
受講対象学科
【サブタイトル】

自己を肯定する―(女性史研究の展開と<いのち>の選別の歴史にふれて)

【講義の目的・内容】

 Iでは、自己を肯定することはいかにして可能かという問題意識のもと「分人主義」という文学的想像力の考え方をふまえ、ついで<女/母>にまなざしをむけ学説史や難問とされる課題の検討を通じて社会文化思想史ないしは哲学・社会学の基礎的用語の理解を深めます。IIでは、Iでの検討をふまえたうえで、<産む身体>に光をあて、それが構造的に暴力にさらされてきた歴史(=優生学)を検討するとともにオルタナティヴとしての障害学や生存学、社会運動の力を探求します。私たちは、ヒロシマ・ナガサキ、ハンセン、ミナマタ、フクシマ、そしてサガミハラの歴史を決して忘れてはいけないと思います。こうした歴史をともに考え、ともに学んでいきましょう。
キーワード:分人主義、文学的想像力、監視社会、生権力、近代家族、ジェンダー、セクシュアリティ、優生思想、障害学

【学修到達目標】

1)社会文化思想史ないし哲学・社会学の基礎的概念・学説史を理解することができる。
2)女性史研究ないし女性学の成果を体系的に理解したうえで当事者意識をもって向き合うことができる。
3)優生学ないし優生思想の歴史を理解したうえで当事者意識をもって向き合うことができる。                         
4)I・IIで学習したことをふまえ、自らの問題関心(テーマ)へと結合させ問題設定しなおすとともに、それを学際的研究へと発展させることができる。
5)上記の着想・考察を、リアクションペーパーやレポートなどを通じて適切に表現し、相手に伝えることができる。

【講義スケジュール】

【第1回】開講にあたって:社会文化思想史とは何か――文学的想像力と「分人主義」

【第2回】「個人」の歴史
【第3回】自己を肯定するということ――「個人」から「分人」へ
【第4回】フェミニズム、ジェンダー、セクシュアリティ(1)――近代家族の発見
【第5回】フェミニズム、ジェンダー、セクシュアリティ(2)――ジェンダーからの/への自由
【第6回】フェミニズム、ジェンダー、セクシュアリティ(3)――性/生の政治の暗部へ
【第7回】ケア労働と女性――グローバル化する<母性>
【第8回】小まとめ①
II
【第9回】<産む身体>と女性(1):日本における優生思想の歴史
【第10回】<産む身体>と女性(2):生権力の磁場と出生前診断
【第11回】<産む身体>と女性(3):「内なる優生思想」という難問
【第12回】ヒロシマ・ナガサキ、ハンセン、ミナマタ、フクシマ、そしてサガミハラの系譜(1)
【第13回】ヒロシマ・ナガサキ、ハンセン、ミナマタ、フクシマ、そしてサガミハラの系譜(2)
【第14回】皮膚の内側の<経験>が拓くもの
【第15回】小まとめ②/社会・文化現象の思想史的再考察

【指導方法】

2020年秋学期オンライン授業:【課題学習型】で行います。毎回、授業資料/授業音声を配信し、「課題」リアクションペーパーを書いてもらいます。そしてそのリアクションペーパーに対し個別にコメントおおくりします(履修者人数が多い場合は抜粋リアクションペーパーを作成し他者の関心に関心をおくことを目指します)。また、随時オンライン上で質問を受け付けます。みなさんが書く文章をいつも楽しみにしています。文章を書くということは、たえず自己の思考や感情を表現し「意味」を与えるということでしょう。こうしたことに力点をおきます。日常のどんな微細な出来事や疑問でも、学問的課題(社会文化思想史的課題)として設定することができるはずです(素朴な「問題関心」から学問的「問題設定」へ)。そのためには、頭のなかだけで思考をめぐらせるよりも対象化すること、すなわち文章を書くことが大いに助けとなるでしょう。なにより文章を書くということは、日々出会う事柄に意味を与えるということであり、それはとりもなおさず、「生きるということ」のヒントを、私自身が私自身に知らせてくれる楽しい営みです。ぜひ、自己を語ってください。人生という物語ではいつだってあなたが主人公です。

【事前・事後学修】

授業内にて、事後に復習すべき内容、事前に次回までに予習しておくべき事柄を説明します(目安としては、復習60分・予習30分)。

【成績評価の方法・基準】

毎回の課題提出(リアクションペーパー)70%、小まとめ①10%、小まとめ②10%、期末レポート10%

【受講要件】

特になし

【テキスト】

毎回、授業資料を配布します。

【参考書】

・石川准・長瀬修編『障害学への招待――社会、文化、ディスアビリティ』(明石書店、1999年)価格:3024(税込)
・金井淑子『倫理学とフェミニズム――ジェンダー、身体、他者をめぐるジレンマ』(ナカニシヤ出版、2013年)価格:2484(税込)
・金井淑子・竹内聖一編『ケアの始まる場所――哲学・倫理学・社会学・教育学からの11章』(ナカニシヤ出版、2015年)価格:2376(税込)
・柴田隆行『多磨全生園・<ふるさと>の森――ハンセン病療養所に生きる』(社会評論社、2008年)価格:1944(税込)
・シルヴィア・フェデリーチ/小田原琳ほか訳『キャリバンと魔女――資本主義に抗する女性の身体』(以文社、2017年)価格:4968(税込)
・エーリッヒ・フロム/ライナー・フンク編/渡辺憲正ほか訳『愛と性と母権制』(新評論、1997年)
価格:3000(税込)・米本昌平ほか『優生学と人間社会――生命科学の世紀はどこへ向かうのか』(講談社、2000年)価格:907(税込)
・平野啓一郎『私とは何か――「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書、2012年)価格:740円(税込)
ほか、適宜紹介します。

【関連分野・関連科目】

社会文化思想史A

【備考】

重要:上記のように講義計画を立てましたが、オンライン授業実施に伴い、主として「分人主義」(平野啓一郎)という社会思想についての資料を詳細に作成したうえで、「自己肯定感」に着目しゆっくりと丁寧に検討していきたいと思っております。また、みなさんの関心に応じて随時検討課題を提示いたいします。

【添付ファイル1】
【添付ファイル2】
【添付ファイル3】
【リンク】