女性学の研究演習B【集中】
担当者 内藤 和美(ナイトウ カズミ)
年度 2020授業コード XM17024301 科目ナンバリング
対象年次 1~2 授業形態 演習 実施形態
時間割 秋集集集 開講キャンパス 白山 教室 研究室等
単位数 2 主たる使用言語 日本語 実務教員科目
授業科目区分
授業回数 15
受講対象学科 大学院文学研究科教育学専攻
【サブタイトル】

【講義の目的・内容】

女性学は、社会に、構造的な、性別による分け隔てや偏りとそれによる差別が存在すると認識し、それらを撤廃して性別について公正な社会を実現することをめざす立場から、性差別の存在のしかたや再生産のメカニズムを明らかにし、撤廃・変革の方途を見出そうとする学問である。性別による分け隔て・偏り・差別は、社会のあらゆる局面を貫いて存在し、それは学問の世界も例外ではない。女性学は、既存の学問の男性偏向、すなわち圧倒的に男性によって担われ、男性の社会的経験に基づいて理論化・体系化されてきたことを批判し、その歪みを修正して方法論や概念・理論や解釈を再構築しようとする。同じく性差別の存在のしかたや再生産のメカニズムを明らかにし、撤廃・変革の方途を見出そうとする学問にジェンダー研究があるが、女性学とジェンダー研究の違いは、当事者性の位置づけにあると言える。女性学は、そうした性差別の解明、撤廃・変革の方途の見出しを、社会的に女性と位置づけられることによって生じる経験からの理論化によって行おうとする。あくまで女性学視点に立ち、かつ高い透明性を備え、学術的価値を認められる研究を産出していくことは実は容易でない。なぜなら女性学視点は、既存の(確立された)学術研究のあり方の相対化・批判を含むからである。本演習は、このような認識に基づき、女性学の視点と女性学およびジェンダー研究の知識を各人の研究遂行に活かすことを目的とする。真摯な取り組みを期待する。

【学修到達目標】

①女性学とジェンダー研究のアプローチの違いを説明できる、
②履修を通じて獲得した戦後日本社会のジェンダー構造、それが生んできた諸現象、ジェンダー構造を変革して目指されている社会像とそこに向かう方途等についての知識を自身の研究に活かすことができる、
③あくまで女性学視点に立つことと、学術的価値を認められることとの間に立ち現れる課題を整理し、両者をとも に放棄しない研究のあり方を具体的に考えられるようになること、を学習到達目標とする。

【講義スケジュール】

第1回 条件の平等の保障、実質的な機会の平等の実現、そして結果の平等
第2回 国連女性差別撤廃条約の画期性
第3回 男女共同参画社会基本法の積極的特徴と課題』
第4回 家事労働の女性偏在の解消と家事労働のゆくえ
第5回 ワークライフバランスとジェンダー
第6回・第7回 女性学の学位論文 村上彩佳『フランスの性別クォータ「パリテ」に関する社会学的研究ー女性たちの運動と差異のジレンマに焦点を当てて』を読む
第8回 村上彩佳論文に見る女性学視点と学術的優位性の両立
第9回・第10回 女性学の学位論文 丸山里美『ホームレスとジェンダーの社会学』を読む
第11回 辻京子論文に見る女性学視点と学術的優位性の両立
第12回・第13回 平井和子『日本占領を問い直す:ジェンダーと地域からの視点』を読む
第14回 平井論文に見る女性学視点と学術的優位性の両立
第15回 総括

【指導方法】

教員の講義発題と討論による。

【事前・事後学修】

第1回~14回:第6回~14回の講読対象以外の学位論文(「テキスト」参照)のうち1冊の精読

【成績評価の方法・基準】

学習到達目標の達成度と、取り組みの積極性の評価による。
学習到達目標の達成度は、学位論文精読を通じた分析・考察の深さによる。
取り組みの積極性は、授業時の発言の積極性、貢献の大きさによる。

S:取組状況、学習到達目標の到達度ともにとくに優れている、A:取組状況、学習到達目標の到達度ともに優れている、B:取組状況、学習到達目標の到達度ともに平均的である、C:取組状況、学習到達目標の到達度のいずれかに問題がある、D:取組状況、学習到達目標の到達度ともに問題がある

【受講要件】

女性学・ジェンダー研究分野に課題認識をもつことができ、自身の修士論文に生かそうとする意思があること

【テキスト】

・授業プリント
・第6回~14回に使用
丸山里美:女性ホームレスとして生きる―貧困と排除の社会学.世界思想社
平井和子:日本占領とジェンダー日本占領と基地売買春―.有志舎(2014)(白山図書館所蔵)
村上彩佳:フランスの性別クォータ「パリテ」に関する社会学的研究—女性たちの運動と差異のジレンマに焦点を当てて(2018)(添付のPDFファイル)

【参考書】

第1回~第14回の事前事後学習の対象図書(すべて白山図書館所蔵)
湯川やよい:アカデミック・ハラスメントの社会学的研究-学生の問題経験と「領域交差」実践、2014 4900円+税
杉浦浩美:働く女性とマタニティ・ハラスメント.大月書店、2009 2600円+税
徐 阿貴:在日朝鮮人女性による「下位の対抗的な公共圏」の形成-大阪の夜間中学を核とした運動.御茶の水書房、2012 5400円+税
塚原久美:中絶技術とリプロダクティブ・ライツ-フェミニスト倫理の視点から.勁草書房、2014 3700円+税
西倉未季:顔にアザのある女性たち.生活書院、2009 3000円+税
杉村直美:養護教諭の社会学 学校文化・ジェンダー・同化.名古屋大学出版会 2014 5500円+税

【関連分野・関連科目】

【備考】

自身の学究、個人・社会人としての生き方と重ね合わせた、真摯な取組を求めたい

【添付ファイル1】
Atyaka Murakami .pdf
【添付ファイル2】
【添付ファイル3】
【リンク】

内閣府男女共同参画局 http://www.gender.go.jp/