マスコミ倫理・法制論
担当者 志柿 浩一郎(シガキ コウイチロウ)
年度 2023授業コード 1540223001 科目ナンバリング
対象年次 2~4 授業形態 講義 実施形態 対面
時間割 春火5 開講キャンパス 白山 教室 6312教室
単位数 2 主たる使用言語 日本語 実務教員科目
授業科目区分
授業回数
受講対象学科
【サブタイトル】

物が言いにくい社会で建設的対話をするにはどうするか考えられるようになるためのメディア倫理法制論

【講義の目的・内容】

本講義では、マスコミ倫理法制に関するこれまでの議論を踏まえつつ、メディア倫理法制に関する基本的な考え方と知識を身につける。ただし、単なる知識獲得で終わらせたくない。基本的知識を獲得した上で、実社会の問題を分析・批判的に思考していくための素養を身につける。これからの社会で、自分がどのように知識や情報を得て、いかに社会に還元していくか、また現状に合わせて主体的に判断・行動し、いかにして情報を共有していくか、話が通じず自分が受け入れがたい他者やグループとどう対話し、共生の道を探っていくか、これらを考えていくための基本知識を身につける。
 メディア倫理・法制論の問題は、表現の自由に関わることが中心である。そこに、著作権やプライバシー、誹謗中傷・名誉毀損などが関係してくる。また、報道の自由、批判する自由、反論する自由など、私達が対話をすすめていく上で必要な権利と自由を巡る問題に関係する。表現の自由という言葉は一度は耳にしたことがあるだろう。表現の自由は、どこまで自由が許されるのか?最近では、第45米国大統領が虚偽情報を共有し、連邦政府議会襲撃を扇動したことによって、SNS企業大手からアカウントを停止された。これに対し、欧州各国首脳は表現の自由を脅かすものとしてSNS企業の対応に懸念を示したことは記憶に新しい。イーロンマスクは表現の自由の考え方を盾にし、利己的か否かは明らかではないが、真の表現の自由を実現するためにSNS企業を買収した。それに対して様々な意見があり、批判的に見る者もいれば、好意的に見ている者もいる。日本では、例えばヘイトスピーチに関連した問題では、どこまで表現を認めうるか議論されている。しかし、誰もが納得する答えはでていない。出せないのが現実だ。その中でどうしていくべきか?黙っていればいいのか、発言したほうが良いのか?誰もが情報発信をすることが可能な社会にあって、表現をめぐる権利と規制はその概念が揺れ動いている。その状況で、ルールや社会通念上の倫理観を知ることは重要ではあるが、私たちは普段生活していく上でどれぐらいルールを理解しているといえるだろうか?なお、本講義は「メディア」の倫理法制、特に表現の自由を巡る問題について論じる概論と理解してもらいたい。科目名上マスコミ…となっているが、SNSに関わることも含むし、可能な範囲で情報倫理に関する問題も取り上げる。

【学修到達目標】

1.表現の自由をめぐる倫理法制に関して、基本的な考え方と知識を習得し、何が問題となりえるのか理解する。
2.自分の身の回りの問題だけではなく、メディア倫理法制論をめぐる問題が、どう個人に影響するのか理解し、自分で行動・判断するための基礎知識を身につける。
3.日々得られる情報を吟味し、必要に応じてその情報を必要とする人に共有できるようになる。
4.本科目での学びを通して必要な背景知識を習得し、その知識を活用して、論理的に意見が言えるようになり、他者と建設的な対話や議論をしていくための素養を身につける。
5.本講義で得た知識を応用し、自ら課題を見つけ主体的に学習を進めていく習慣を身につける。

【講義スケジュール】

1.オリエンテーション(講義概要、授業の進め方や評価方法の説明、履修条件と授業ルールの説明、)
2.背景知識 ① 現代のメディア状況と特質
3.背景知識 ② 表現の自由と私達の権利
4.表現の自由をめぐる法制史① 思想の自由市場の考え方
5.表現の自由をめぐる法制史② 日本国内での考え方(中間レポートの内容アナウンス)
6.表現の自由と規制 ① どこまで規制するべき?
7.表現の自由と規制 ② メディアへのアクセス権
8.政治的発言と公平性 ① どこまで批判は許される?(中間レポート締め切り)
9.政治的発言と公平性 ② 日本の政見放送
10.表現の自由と責任 ① プライバシー保護と報道の自由
11.表現の自由と責任 ② 表現の自由と自主規制 (期末レポートの内容アナウンス)
12.メガメディアと集中排除規制
13.グローバル化とインターネット時代の自由と規制①
14.グローバル化とインターネット時代の自由と規制②
15.まとめ(期末レポート締切)

なお、進捗状況に合わせて、講義スケジュール、課題の量などを変更する場合がある。

【指導方法】

指導方法は講義中心となるが、適宜映像素材を利用して受講者の理解が深まるようにする。また、状況に応じてディスカッションやレスポンを活用した授業内アンケートを行う。学術資料や政府機関が公開している資料なども共有する。
講義だけでは限界があるため、課題を出す場合もある(ただし、受講者数によっては、講義の進め方を変更する場合がある)。課題の有無にかかわらず、分からない箇所を調べたりするなど、自分から探求する姿勢を持つこと。講義中にわからないことなどがあれば、授業中に質問することはOKであり、積極的な姿勢を求める。授業中にこちらから質問することもある。全く反応がなければ指名する場合があるし、もしなければクラス内のレスポンを活用して授業内では匿名で発言できる場を設ける。なお、人が何かを発言した場合やレスポンのコメント、先生の発言も含め、その人がどういう文脈で話しているのか考えて理解し、対話する努力をしてほしい。単語だけを切り取って批判、単語だけを切り取って他人や先生のことを匿名で批判することも度々起きる。万が一そのような事態が起きた場合は、授業内で発言の内容を起点として表現することの意について考える時間を設け、発言の意図などを本授業の主旨にしたがって検証することを行うこともありえる。
また、指名された人が困っているようであれば、周りが代わりに答えてあげるなど、クラスメート同士で協力する姿勢を持つこと。授業内外の課題の内容、授業態度、授業内での様子を総合的に評価する。なお、15回の授業で全てをカバーするのは難しいが、限られた中でも可能な範囲で出来るだけ多くのケースを扱い大枠が学べるようにする。講義を受けて本テーマに興味を持ち、さらに探求したいという場合は、別途参考資料を紹介するなど、今後皆さん自身で学習(研究)していけるようにする。

【事前・事後学修】

本演習科目は、授業外課題など授業以外での十分な学習時間を要する。大学設置基準に従う。

事前学習:本講義用簡易webサイトを確認、配布資料があれば予習した上で授業に臨むこと。また本授業に関係ありそうなニュース、SNSでのつぶやきなどがあれば事前に読んだり、見たりしておくといい。(1.5-2時間)
事後学習: 授業のノートを見直すなど、理解が十分でない点を明らかにし、次回の授業で質問できるよう準備すること。(大体2時間)

【成績評価の方法・基準】

総合評価は東洋大学の成績評価基準に準拠する。

平常点(クラス参加、授業内学習活動) 25%
授業外課題 /リアクションペーパー 20 %
中間レポート 25%
期末レポート 30 %

【受講要件】

主体的に本テーマについて勉強する気があること。批判的思考能力の作法とマナーを学習していることが望ましい。わからない状況でもなんとかわかろうとする姿勢が最低限あることが望ましい。わからないことを恥じずわかるようにするための努力をする姿勢があることが望ましい。物怖じせず必要に応じて発言、自分の質問を確認できるようにする態度があると尚可。最低限対話を試みようとする姿勢があるとなお可。

【テキスト】

担当教員が構築した授業用簡易webサイトを活用する。当サイトは授業の進行と並行して、受講者の提案を取り入れながら随時更新していく。

【参考書】

鈴木秀美 & 山田健太(編)『よくわかるメディア法 第2版』(ミネルヴァ書房、2019)
松井茂記 『マスメディア法入門 第5版』(日本評論社、2013)

その他の参考文献/資料は授業内で適宜紹介する。

【関連分野・関連科目】

ジャーナリズム論、世論、メディア表象関連の科目あるいはメディアの社会的影響について学べる科目

【備考】

特別な支援を要したり、特別な配慮が必要な場合は必ず担当教員に相談すること。授業には真摯な姿勢で参加すること。担当教員も学習しやすい環境を可能な範囲で整える。

授業態度が極端に悪い場合、他の学習者の妨げになるので、退出を求める場合がある。全ての授業への出席が前提である。楽をしたい人、単位を浮かせたいと思っている人にとっては不満の残る厳しい授業となる。

遅刻、出欠などのルールに関する詳細は、授業webサイトに提示、また、初回の授業で配布する。
なお、特段理由もなく15分以上の遅刻する場合は欠席とみなす。レポートなどでコピペなどの不正などが発覚すれば相応の対応をする。ただし、chatGPTなどのAIを上手に使用するのは承諾する。

可能な範囲で対話を心がける授業をしたいと思っている。それは講義形式であってでもある。自分も含め発言しやすい環境を作る努力をしているが、正直限界を感じている。先生も学生も全員が納得のいくような授業にならないことは理解すること。ポジティブになるように授業をすすめたいと思うが、様々な過程でネガティブな視点や表現も共有しなければならないこともあるだろうし、ざっくばらんに発言するような中で、後日、誰かの感覚では問題発言だと思うような表現もでてくる可能性がある。なお本授業およびジャーナリズム論の授業は学生からボイコットする、先生は人バカにした言動があるのでやめろ、ネガティブ教員だからやめたらどうですか、ふざけるなと授業評価コメントで書かれた授業であることは正直に申し上げる。名誉毀損に当たるような表現もあった。行き過ぎたポリティカル・コレクトネスといえる状況が本授業でおきている(ポリティカル・コレクトネスの意味がわからなければ自分でまず調べること)。正しいことを言ったり、かと言って全員が納得するような表現を先生や学生が言う授業ではないので、理解して授業を履修すること。

授業用簡易Webサイトにて参考資料や映像資料を配布する場合がある。定期的に確認すること。指示の意図が理解できない、何をしているのかわからない、何がわからないかもわからず混乱しているという場合は必ず担当教員に確認をとること。何も言わなければ対応が難しい。それを避けるために、必要に応じた対話と確認作業を求める。

【添付ファイル1】
【添付ファイル2】
【添付ファイル3】
【リンク】

http://koachshouse.mods.jp/mediastudieswithkoach/